2013-2017 kyoto → shiga

旧ブログ「つれづれ日誌」公開中。

*つづきは、note にて更新中。

 


湖北暮らし、はじまる。

3月から、ついに滋賀県の北部へと引っ越した。昨年秋、あれよあれよという間に人生の歯車がぎりりと音を立てて加速。春を待てず、急かされるように、今日まで。滋賀は木之本、北国街道沿いに古民家を見つけて、住み始めました。

昨夜また降りだした雪は、今朝にはどっしりとかさ高く積もり、溶けるそぶりも無く。私の人生に降り積もる、かつてない大雪。いったいどうなるんだろうという不安の上を、しんしんと降り積もって重みを増していきます。憧れの田舎暮らしは、まだ始まったばかりで、まだ楽しむ余裕はなく。日々、生活のひとつひとつのリズムを、この街の時間の流れをつかむのに、少し時間がかかりそうです。京都が恋しい。人が恋しい。春が恋しい。朝目覚めるたびにそんなふうに思いながら、庭に広がる真っ白な雪の絨毯を眺めています。南国が大好きな私が、どうして雪国へ来てしまったのか。その理由は、きっとこの先みつかるでしょう。しばらくは、取材などの仕事で大阪、京都へは通いつつ、ゆくゆくは京都の拠点も探しているところです。私の欲張りな一年は、まだはじまったばかり。

虫の知らせ

住宅街の中、我が家の小さな庭に珍しい来客。

もう一週間はお泊りになっている。

幼い頃、川辺でみかけたときから、神様トンボと呼んでいた。

お盆が近づくと、どこからともなくやってきて

気が付くといなくなっている姿から、

ご先祖さまがやってきた知らせだと

親からそう教わった気がする。

時折、漆黒の羽を優雅にひらひらとひらめかせて

日陰でゆっくりと休んでいる姿はとても神秘的で

細い胴体はエメラルドに輝いている。

不思議なことに、2匹のつがいで、仲良くしていたかと思うと、

翌日には3匹、そして4匹に。

今日も、草葉の陰から見守るように。

蝉が絞り出すように鳴き始めた朝

いよいよ夏を迎える。

 

 

梅の香に誘われて

数年前から、梅の咲き揃う時期にいつも私は熱を出す。ちょうど厄落としの時節なのかもしれないなと覚悟している。それもいけない、癖になるからと、どうにか気持ちを張り詰めて2月を越えた年は、丸一年病気をしないことも。けれど、病というのは不思議なもので、体を休めれば自然と頭や心も整理をし始めて、膿み出しをはじめる。だから、年に一度のこの時期の病は、自分から進んで、気をつけてかかる事にしている。
こんな風になったのは、7,8年前の巫女さんをしていた時、私は節分祭の大祭にあたる大切な日を前に、高熱が出てしまった。大祭というのは、特に大切なお祭りで、当時、絶対に休んではいけないということを耳にしていたものだから、祭りの前日、医者嫌いな私も急いで病院へ走った。すでに高熱だったが、点滴をうって貰って、とにかく這ってでも行かねばと心に誓った。しかし、これまで体験したことのないほどの高熱で、立つことも出来ないまま、当日を迎えてしまった。結局、大祭は欠席し、私は気持ちの糸がぷつりと切れた心地がした。それから、私の心に浮かんでいたもやもやも、いっきに晴れていった。その日、巫女さんを引退することに決めた。きっと、神の思し召しだった。私の巫女さんとしてのプライドを、優しく手折られた日。
だから、この時期に熱を出すと思い出す事がある。
いま、立ち止まって考えるべきことはなにか。
静かに、自分の歩いてきた道を振り返りながら。


photo 今宮神社の梅

秋を好むもの

年を重ねるにつれて、秋が好きになっていく。
すみれという春の名前でありながら、わたし秋生まれです。


ちょっと自慢したいことと言えば、

我が家に虫の音が響くこと。
秋明菊の花びらがひらひらと散って
今朝 キンモクセイの香に気づいた
季節が巡るごとに 毎日発見がある我が家の庭です

秋の湖岸の景色も 夏とは違って静かに
キラキラと水面が揺らぐ
JRにゆられる電車の日帰り旅は
何度だってしたい

せわしない散歩にでかけても
ほっとする景色を目に刻む
稲穂が刈り取られた田んぼの
ちくちくとした感覚を思い出したりしながら。





あめ、つち、うるおう。

今朝

しとしと降る雨のとても静かな音に

そっと目を覚ました秋明菊


露に顔をふせるように

その儚げな姿


秋入梅

あきついり


秋の梅雨入りが、土を豊かに

草花は露にかがやく


静かな目覚めに

ゆっくりと今日をはじめる



野原の感触

見積もることは大切か。

予想だにしない未来をいくつも見てきた。

というのはちょっと違って、現実を淡々と見積もって、こなしていくことが、本当に面白くないけど、大人だ。

「感性で生きるひと」と言われる身には、どんどんその波にのまれることに抵抗はしないけれども、つまらない。




私は無になって 風にのり
一面の野原を吹き抜ける
アザミの棘を優しくなでて 


季節がとまる
私の中で。

タイムカプセル

大切に瓶詰めされていたのは、植物の種だった。

色も形も様々に、小さな種がみっちりと詰められた小瓶は、実家の食器棚の上の方に大切にしまってあった。引っ越しのたびに自宅の庭から種を収集して、母から父へと受け継がれて、ついに私の自宅へやってきた。
時間を止めた種たちは、眠っているのか、死んでいるのかわからないけれど、きっとどれかは目覚めてくれるだろうと、いくつかの植木鉢にそっとタイムカプセルを仕込んでみた。

一週間たったある日、にょきっとした緑の芽を見つけた。

その種は、父が恩師から譲り受けたという台湾の朝顔。

いつぞや玄関に咲いていた、その艶やかな紫色を見て、父は嬉しそうにしていた。

まるで自身の役目を思い出したかのように、目覚めた種。

芽の先っぽには、まだ黒い種の帽子をかぶっていて、まるでむずがるように伸びをしている。

数日たって、すぐ隣に、またもうひとつの芽が出てきた。

「その種は…心のポケットにひとつ…」というような詩が添えられた、父の絵を思い出した。

この花が思い切り咲ける場所を想像しながら、朝晩の水遣りを日課する毎日。

目覚めの時を、植物たちはよく心得ているのだ。

 

 

「旅する日本酒」…つづく!

先週の金曜日―

どきどきで始まった「旅する日本酒」イベントも、ご来場いただいた皆様のあたたかなご声援と、周囲の心強いサポートによって、無事に幕を閉じました。

まだまだ経験不足でありながら、今回、沢山の反省を得ることができたことが、なによりの収穫です。今後のイベントに、必ずや生かします!

また、帰り際、頬を赤らめた、ほろ酔いの方々の「楽しかったよ」のひとことが、胸に染み入りました(*^^*)

今回、「ほろ酔いナイト」に一番にメールで申し込んでくださったのも、20代前半の学生さん3人というのも、未来につながる嬉しいご縁でした。

原画展では、滋賀県の蔵元の奥様がご来場くださって、思いがけない再会と出会いに、とても感激いたしました。こうした繋がりは、お酒と人、人と人を結んでくださる、松尾さんのおかげだと、改めて感謝をささげています。
その松尾大社で3月7日に開催のイベントを、来週に控えております…!

初心忘れず、感謝をこめて挑みたいと思います!
また皆さまと、お酒のご縁でお会いできるのを、心より楽しみにしています。



はじまり、旅する酒蔵。

あの日訪ねた酒蔵を
もう一度訪ねたい――


あの蔵人さんの

笑顔や言葉がよみがえる。

わたしの体にしみこんだ

あの土地の匂いやお酒が
とても恋しくてたまらない。
――春が来たら、また訪ねよう。


力づよい、日本のもづくりをする人々にもらった
かけがえのない経験が、
今の私を支えてくれている。

はじまり

一年の計は元旦にあり。

 

そんな言葉がぐるぐると頭をめぐる

正月早々、吹雪の坂道で動かなくなった車の中に閉じ込められ

あわや、こんな街中で遭難するのかという深夜

それでも、しんしんと降り積もる雪は綺麗で

世の中の汚いものをすべて包み隠すような白

しかし私の今年一年は、こんなもんじゃなく

ただただ、焦らず、ものごとを見極めて進めよ、歩めよ。と

ふいに、道を誤って、遭難しかかるほどの危うさを秘めて

ますます慎重さをもて。と

その道の厳しさを予感した。

 

その道、実に険しく美しい

はじまり。

 

 

待つ花

残された花々の咲く家に

ただひとり

時を止めた絵画

 

待ち人来ずとも

たんたんと過ごす日々に

咲く花

時を進める。

ある夏日の風景

ものごころついた時から

この景色を前に

家族で食事をして、

川に降りては水遊びをした。

 

それはいつのころからか

 

ここに来たら

まるで時を留めたかのように

あの頃と同じ時間が流れている。

子供らを羨ましく眺める

そんな自分にちょっと戸惑いながら。

京都の奥座敷、

ある夏の休暇。

緑のカーテンごしに

水辺で憩う家族が見える

 

メダカ取りに夢中の子ども

水かけていい?と聞いてくる

 

「あかん」

と答えるけど、

ほんとは私も今すぐ飛び込んで、急な流れにわくわくしたい。


そんなことが出来なくなったのは、ずいぶん前から。

 

 

 


闇にひそむ子供

静かな闇に

コンチキチンの音がひびく

 

灯りを頼りに、階段を上った先を覗く

人の姿は見えず

確かな音色だけ

 

音が鳴りやんだ

子供たちが駆け下りてくる

 

自転車の後ろに浴衣を着た子らを乗せて、

各家々へと帰って行った

 

闇に消えていく後姿

 

 

 

大人たちに囲まれてひそむ

声なき声

 

声をひそめるのが
限界になったそのとき、
やっとほんとうのことが言える

 

闇の向こうに消えていく

得体のしれないものたちをかき消す灯り

 

遠くに響く

子供たちの笑い声

 

曇り空 バーベキューは食べごろ

心のなかの忙殺された私が

判断を鈍らす

 

思いがけず、

素直な優しい言葉をつぶやく仲間の声に

はっと我にかえるような

 

曇り空も決して嫌いじゃないと

そう思えるような素敵な一日だった

 

晴れ間がのぞく

しいたけは食べごろに焼けた

 

小学校のときみたいに

放課後ランドセルを放り投げて

遊びに笑った

そんな一瞬が甦る

 

あのころの

楽しい友達と

なんら変わらない

 

季節のはざま

子供と大人のあいだ。

 

その町の匂い

 

 

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「酔胡楽」祭りのあとに

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「酔胡楽」一日目のご褒美

本日は、松尾大社での奉納三人展の初日。
とても過ごしやすい日和となり、

多くの方々が尽きることなく訪れては語らい、
和やかな笑顔に恵まれた一日でした。


そんななかで、祭り前日の忙しい中

時間を見つけて立ち寄ってくださった神主さんから
「いよいよ、良くなってきたね。」
と何気なくお褒めの言葉をいただいたことが、

私にとってなによりのご褒美でした。

自分では、淡々と絵を描くことで過ごしてきた日々を、
こうして誰かが見ていてくださっていることが、
何よりうれしく、

描きがい/生きがい だと思います。

明日は

もう最終日。

松尾大社は「還幸祭」当日となり

勇壮な神輿のおかえりを迎えます。

 

★ギャラリーは9:00~17:00まで。

一日在廊する予定です。

 

 

 

いつかの雨上がりの庭

気が付けば相手任せにしていた

一本の木。

 

枯れそうだった足元に

ふかふかの緑の苔

 

いつか一緒に見た雨上がりの庭先

 

忘れていた

枯渇していた根っこの部分に

水遣り。

 

明日の晴れ間を

仲良く歩けるように

何度でも立ち止まって

笑顔を向けて。

湖畔に佇むひと

「ひとやすみ ひとやすみ・・・」

一休さんにそう言われた気がして

いっきに背負っていた荷物を一度おろして

木陰で休憩

 

こんな夏日に息を切らして

砂漠を彷徨うようだった

 

それは気持ちの中だけのことで

目の前に広がる湖に

ゆったりと釣り糸を垂らして

からっぽの頭で過ごしてみれば

絡まったいろんなことが

するする流れていってくれるような気がして

 

ひとまず

あわてなーい、あわてなーい

ひとやすみ。

 

5月、山吹のお宮で

目が覚めるような

山吹の色

 

かえる場所は

いつも同じ

 

季節がめぐり

毎日たくさんの人と出会い

別れて

かえる場所

 

私がわたしをふり返り

ぶれない軸を確かめに

 

いよいよ、また今の私の作品を見てもらいに

松尾さんへ。
松尾山が新緑で美しくふくらむ

大好きな季節。

 

◇◇◇

 

松尾大社 奉納 三人展

すいこらく

「酔胡楽」 5月10日㈯ ・ 11日㈰ in 松尾大社・清明館ギャラリー

・ 松浦 すみれ/顔彩イラストレーション
・ 山根 一生/書

・ 諫山恵実/今様古典画

※11日には還幸祭があり、勇壮な御神輿で賑わいます。

グループ展を終えた後の修験道

2週間にわたるブロギガ展を無事に終え、

翌日、

東近江にある太郎坊宮の山を目指していた。

 

多くの反省を振り返る間を惜しみつつ、

次の山へ。

 

想像以上の修験道。

 

息を切らして見上げれば、

終わりの見えない急階段が空へと続いていた。

 

「多くの修験道たちが、天狗の太郎坊(たろぼ)さんを目指されてきたんです」

 

と、山の上で出会った神主さんが、優しい表情で教えてくれた。

 

新緑美しい山々には、まだ山桜が淡く彩りを添えている。

田んぼにはそろそろ水がひかれ始め、

あぜ道を丁寧に整える農家さんの姿に

わが身のせわしなさを痛感する

 

明日はどこに向かっているのか

まだ考えずに、今日は眠ろう

今歩いている道は、二度と通らないかもしれない。

2両の列車から、ぽつんと駅に降ろされる。

 

今日も初めての町を歩く。

 

日差しは強い。

まっすぐのびる橋の上を

ただひたすら、山に向かって歩いていく。

 

美しい景色にふりかえり、

「はあ~っ」と感嘆の声をあげるも、ひとり。

 

ふと気が付けば、帰り道は別のルートをたどっていった。

 

二度と通ることのない道が、

果たしてどれだけあるだろう。

 

一度きりの出会いと、道のり。

 

どれもが愛おしく、振り返るだけ。

 

ちょっと、ひと休みしようか。

なんにもいらないから、

お茶を一杯だけ。

 

ふうっと息をはいたら、

薪の燃える匂い。

 

この町で急いでいたのは

私ひとりだけで。

 

何をしてるんだろうと思うこともあるけど

振り返れば、ひとり旅は

自分との対話。

 

もう少し続くこの道のりは

すごいスピードなんだけど、

ときにはこの薪ストーブの前で

時間を止めてしまった物たちに囲まれて

ゆっくりお茶を飲むのがいい。

 

紀州の香りが恋しい

和歌山は眩しい日差し

行くたびに好きになっていく

 

そこは蓮華の花咲くむこう

紋黄蝶が飛びかう

菜の花の香り

 

海南の駅前に

美味しい中華料理屋さんも見つけた

 

いっそ住みたい

もっと仲良くなりたい

 

夏にまた会いましょう

もっとゆっくり

ゆっくり

桜の花弁が

はらりと落ちるスピードで。

海南の空で

kuroe,wakayama

坂道をのぼった先に

いっきに溢れだすように

咲いていた

 

この空のように
広くてあたたかい人たちの住む街

 

 

この勢いに乗らなくてどうする
春爛漫


春緩む

nara taima-temple

 

 

静かに花とむきあう

こぼれるように開き始めた蕾

その瞬間を逃すまいと
春を噛みしめる

 

 

滴桜

潤いの桜

けむるような雨に濡れて

はやくも満開の桜

心にさーっと春風が吹いて
満ちていくのがわかる
滴のひとつひとつが

私にも。

 

いろいろな予感
そろそろしてきた?

 

春を待たずに

時の流れを静かに感じているかのように
そおっと花を開いて

 

あたりに漂う存在の残り香

 

一歩一歩と足音が響いてくる

春を過ぎてしまうのに

あまりにも早いスピードにはなりたくないと

今更ながらに抵抗している

 

穏やかな光の中に包まれて

きっと あのひとは幸せだった

雛祭りの桃の花

 

雨がしとしと夜を濡らす

天満天神梅酒大会!

ついに来た。

大阪天満宮で毎年行われている梅酒大会。

300種類を越える梅酒・リキュールを試飲して、

お気に入りの5銘柄に投票。
後日、「天下御免」の梅酒とリキュールが発表される。

当日券は、700円。それで飲み放題。

 

人の波を予想して、開始時間10時を少し過ぎて参加。

境内の一角が何やら賑わっている。すでに人がずらりと群がっていた。

今日は平日なんてこと忘れるくらい、盛り上がって、

出来上がっていく人たち。

不思議な使命感を帯びて、投票用紙を片手に、

とりあえず端から順番にすすむ。

どれを試飲するかという基準を、ある程度自分で設けて、

出来る限り試飲をしていくことにした。

私の基準は、

他の果実などと合わせてない純粋な梅酒、

日本酒ベース、ビジュアル重視。

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心はずむ、ある日のおしごと。

京都の着付け教室、服部和子きもの学院さんのDMを制作しました。


ちょうど一年近く前、グループ展をしていたとき、私の貝殻の作品の前で出会ったゆきこ先生。

服部和子先生の娘さんでいらっしゃるとは気づきもせず、

ただただ、その時の先生の着ていらした着物の彩りに目を奪われました。

私の描いた絵に溶け込むようなかたちで立っておられたのを覚えています。

その時から、ゆきこ先生の感性にすっかり心惹かれてしまいました。
普段から、ゆきこ先生が纏う帯と着物、小物などの組み合わせは、

まるで物語をつむぎだすようで、その色とりどりの演出にわくわくします。

可愛らしい風貌そのままに、りんとした着物姿をいつもお見かけします。

そんな先生の言葉や、表情、想いを、こんな形でお手伝いできて、
なんだかとても心弾む心地がしました。

8日

末広がりの8

永遠の8

八海山の8

でもこれはイチゴ大福の8

蝋梅の灯り

ぽかぽかとあたたかな日差し

ある日ふわりと鼻先に訪れた春の幻影
古民家が立ち並ぶ奈良のいにしえの街道に
甘い香がただよう
足を止めてその香りのもとを探ると
冬色寂しい庭先に明るい黄色がまぶしい
厳しい寒さの日々に
ぽっと灯りをともすような小ぶりなランプシェード
“春はもう、すぐそこまで。”

奈良、菩提酛清酒祭へ

立ちのぼる湯気のむこうに
静かな山麗に佇む僧侶の祈りの眼差し。
ひとの力と、自然の力、発酵の神秘。

力強い杜氏さんのしごとを

はじめて目の当たりにして

 

あたたかい粕汁を皆でいただく

私も湯気に包まれた。

明けの空

静かな馬の目の奥に

青々と広がる草原

勇ましく

風のように走り抜けて

 

今年もたくさんのものを生み落せるように

こわがらずに目を見開いて

まっすぐに進んでいきたい。

 

きっと多くの輝きを目にして

感動するに違いない。

どうか、おそれずに。

 

 

 

私は愛するものを憎む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊丹美術館のベン・シャーン展へ。
今年をしめくくるのにふさわしい
素晴らしい作品に触れられた。

 

 

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そうか、冬がきたんだね。

思いがけず夜の南座を通って気づく。

明々と夜の祇園に掲げられた「まねき」は、今年最後の月を象徴するしるし。

いよいよ冬がきたんだと。

どおりで、本格的に手袋を必要とするほど、

もうコートなしでは歩けない夜だなと思ったよ。

なんとなく気づいてはいたけれど、

その苦手な京都の寒さを受け入れたくなくて拒んでいた。

つまりは年々師走がこわいのか。

あと数週間で、新しい幕明けだというのをわくわくと待ちながらも、

今年最後のやり残したことを出来る限りやり終えようと必死。

この月の盛沢山なイベントは、ありがたい現実逃避とさせてもらいながら。

もうすでに来年のいろいろの予定がせまって見えてきている。

今年のハイライトを振り返ったら、もう進むしかなかった。しわす。

 

うつりにけりな

―――あそこのモミジは今がみごろやで。
 北の方はもう散ってしもたけどな。―――

 

運ばれてくる言葉に

私が知りうる限りの艶やかな赤色を想像して

ますます想いはつのるのだった。

 

そうしてやっと、紅葉狩りを目的に

京都の紅葉地図を広げた。

 

ふと、隨心院に心惹かれる。

いつの日か、梅の香に包まれた園に

小野小町を偲ぶように寂びた庭は

私の心に強く印象に残る。

 

次の日、平日の休みを良いことに、

人出も落ち着いた山科の方へと向かった。

 

駐車場で銀杏のまばゆい絨毯に迎えられ、玄関入口へと向かうにつれ、

盛りを少し過ぎた紅葉が屋根からのぞいていた。

 

冷える廊下に

その静かな時を刻んだ襖。

描かれた花鳥の色々がぼんやりと浮かんでいた。

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走りつづける男

どこまでも昇りつめる

息をつぐ間もおしいような

ときに激しくて優しくて

愛の溢れる音楽に包まれる

 

時代を越えて

たくさんの別れや失望をも音楽に昇華する

それは美しくて

どんどん生まれ変わって

若返っていくような彼の生き方に

とても衝撃をおぼえた

 

音楽は世界をかえる

ひとりひとりの心の中に

光が満ちるように

 

 

 

 

 

11/12 ポールマッカートニーのコンサートにて

 

 

ある秋の朝

キンモクセイが散っていた
その秋は始まったばかり

 

もう 来年のことを考えている

誰も知らない 私だけが知っている私の姿

それは、寒くて布団に埋もれてまるまった秋の朝

幻のように現れる

 

一面ススキの野に出た

いっせいに同じ方向へなびく

風の向き 日向の陰りを察知するかのよう

 

色を濃くしていく木の葉の色

私の体に染み渡るように

しっかりとその色を待つ

 

そろそろ珈琲が恋しくなって

ゆっくりと目覚める

11月の朝。

秋の小さな冒険

久方ぶりの秋の のどかな一日

家族でさんぽ。

家からすぐそばの川沿いに

秋の色があふれていた。

いつだって 見落としそうな

その小さな実りを

そっと手で触れて

ぬくもりを確かめるように

 

咲いている

鳴いている

 

幼子と歩けば

花や木の実 犬や猫

どんなことも大きな発見と冒険の道行

 

そんなことも

忘れていたっけ。

 


作品展「神仏の饗宴」を終えて

個展の最終日、雨でしっとりと緑の色濃い境内。
静かなギャラリーで一枚一枚の絵と向き合った。
私の手から離れて、多くの人たちに毎日眺められたせいか、すっかり表情をかえていた。
晴れ晴れとして、嬉しさがこみあげる。

滋賀県・和邇の平和堂ギャラリーからスタートしたのがちょうど一ヶ月前の9月15日。

10月に入ると同時に場所を地元・京都へと移し、松尾大社での期間も延長となったおかげで、今日まで約一ヶ月間の作品展となった。

わたしにとって初めての個展は、想像をはるかにこえる嬉しい展開がわんさかあって、ひとつひとつが感謝と感動に溢れていた。
けれど、それはこの10年を振り返ると自分が望んで目指してきたこと、ひとつひとつの積み重ねが実ってくれたこと。
蔦が日の当たる場所に自然と伸びていき、ひとつひとつ花が咲くように、新しい日々を追いかけてきた。
いつも家族に支えられ、多くの人たちの出会いに恵まれ、ささかな夢を叶えさせてくれた。ほんとうに、私ひとりの力では何もできやしなかった。
個展を終えて、明日から、また新しい日々が始まるのだ。
この一ヶ月、関わってくれたひとりひとり、一日一日を忘れずに、私はこれからも描き続けていく。

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縁むすびの庭

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かわるがわる

個展会場にふっと現れた多くの友人、知人。
そのたびに、華やいだり、なごんだり、

場の空気がどんどん展開する。
私はとにかく嬉しくて

ずいぶん多くをしゃべりすぎてしまうほど。

もっと観てもらう人にゆだねればいい。

いろんなこと、もっと感じ取って

教えてもらいたい。

だから、なんとかはやる気持ちを

抑えている。

神社の空気は独特で

虫さんたちも時折こんにちは

散歩中のおじさんもこんにちは

ちょっと気分転換に巫女さんもこんにちは。

 

やってみて初めて

ここで個展をひらくと言う意味が

大きく見え始めた。

私の想像をはるかに超える人たちに支えられ、励まされ、今日もこの場所に立っている。

作品展、松尾大社での2日目の記録。

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作品展、地元京都へ。

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