ある隠れ家の喫茶での出来事。
開け放ちの窓辺に座り、坪庭の美しい緑を眺めていたら、そこに異質に植わる苗木を見つけた。主人に聞けば、牡丹の花が見事に咲いた後、枝を落としてみたものの、まだまだ勢い余った葉たちが育ち盛り。
なんとなく気にくわない主人の表情に、どうやらそれが頂き物の牡丹であるらしく、緑の簡素な坪庭をこしらえた中に、それは異質な表情で植わっていた。
ここでは、どの骨董品もご主人の愛情を受けて、まるで息をするように主人を囲み存在している。
そのなかで、生き生きと育つ牡丹の苗木は、ただひとりきり勝手にそこに佇んで、その一角を間借りしている姿。互いに間合いの取り方がまだわからずに。
「誰か貰ってやってくれませんか」との主人の呟きが、まるで運命の矢印のように私に向けられた。そうして、掘り返された牡丹の苗木は、私の家の玄関に、ついに居場所を認められ、今朝からなに食わぬ顔をして植わる。
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